2017-04-02(Sun)

“ネットにはじかれたボールはどちら側に落下するのか、わからない” 漫画:「スティール・ボール・ラン」

30を過ぎたいい年をして、漫画を読むのが好きな私…。

中でも「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズは大のお気に入りなんですが、人様に薦めると、よく、


「えー。100巻くらいあるんでしょう。今から読むのちょっとシンドイかな。」
「ジョジョって8部まであって、主人公が全員別々とかいうけど、結局何部がいいの?途中の部から読んでもいいの?」

なーんて、言われてしまうこともしばしば。


そんなジョジョ初心者の方に是非おススメしたいのが第7部!!

障害のある子どもの育児ブログで、いきなりなんですが、今回は、自分の好きな漫画作品についてご紹介したいと思います。


「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズの第7部は、それまでにあった6部までと切り離された世界になっていて、このパートからでも読みやすくなっています。

そして、この7部の主人公、ジョニィ・ジョースターは、歴代ジョジョ主人公、唯一の身体障害者…なのです。


ではここで、第7部:スティール・ボール・ランのお話をちょっとご紹介。


***********


舞台は19世紀末のアメリカ―。主人公のジョニィは、もとは競馬会の有名な騎手だったのですが、慢心から事件に巻き込まれて、下半身不随になってしまいます。このジョニィがひょんなことからアメリカ大陸横断レースに参加することになるのが、7部のストーリー。(上半身だけは動くので、なんかスゴイ方法で馬にのってみせて、馬でレースを移動します。)


この主人公・ジョニィの台詞の有名なもののなかに、

「ぼくはまだ“マイナス”なんだッ!“ゼロ”に向かって行きたいッ!。」

というものがあります。

以前から、“なんだか重みがあってカッコいい台詞だな”と思っていましたが、出産後になって読みかえすと、ものすごく胸に突き刺さるものがあります…。


「障害なんてなかったはずなのに。」「こんな人生は自分の人生ではないはずなのに。」


こういうバトルものの漫画の主人公ってなにかと強メンタルな人が多いように思うけれど、このジョニィは、自分の過去に未練タラタラ。後悔がいっぱいな人なんです。でもそこがなぜか魅力的…!


SBR10集英社
↑このイケメンが主人公のジョニィ。メソメソ、クヨクヨもするし、意外に腹黒いところもあったり、ある意味、主人公らしくない、マイナスのオーラがあるキャラクター。“自分の障害をなおす奇跡を求めて”アメリカ大陸横断レースに参加します。
(「スティール・ボール・ラン」第10巻 著者:荒木飛呂彦 発行:集英社)




そして、ジョニィの相棒役として、ジャイロ・ツェペリという、もう一人の主人公ともいえる存在が登場します。ジャイロはヨーロッパの小国の出身で、代々、死刑執行人を受け継ぐという特殊なバックグラウンドの持ち主。

ツェペリ家の嫡男は、“罪人を一瞬で死に至らしめるため、人体や医学に精通していなければならず”、表向きは医業を営んでいます。つまり、ジャイロはお医者さんでもあるんですよね。

…このジャイロの過去のエピソードの中に、印象的なお話があります。…


ある日、医師をしているジャイロとその父のもとに、事故にあった妊婦さんが運ばれてきます。

「2人が助かるのは無理だ。選ばなくてはいけない。母親か?その息子か?…ジャイロ、おまえがどちらか選べ。」

父親にそういわれたジャイロは、“2人とも助けられないか考えよう”“この女性の夫が父親なのだから、彼に選ばせよう”と、決断を渋ります。

そのときジャイロの父親は、息子に、これを選ぶことが自分の一族の役割だといって、彼を諭します。


「『母親を救えばまた次の子供は産めると考えるか?』それとも“跡取り”だからひとり息子の方が大切と考えるか?』一族や父親の価値観で…
だが いいか…テニスの競技中・…ネット、ギリギリにひっかかって、はじかれたボール…
その後、ネットのどちら側に落下するのか…?誰にもわからない。そこから先は“神”の領域だ。」



この、「ネットにはじかれたボール」の台詞、作品に数回でてきて、私に強い印象をのこしました。


ある別の過去のエピソードでは、ジャイロが、目の不自由な女性の視神経の手術をしようとして失敗に終わり、彼はその結果を呪います。

けれど、その後、実はその女性が、「盲目のままでいたがために、暴力を振るっていた元夫の家族に殺されずにすんだ」という、数奇な運命を知ることになります。


人の踏み込むことのできない領域があるということ…。
けれど、運命に翻弄されながら、ジャイロやジョニィは懸命にそれに抗おうとします。


SBR11集英社
↑こちらのイケメンが相棒役のジャイロ。ある意味、ジョニィよりもプラスのエネルギーに満ち溢れた、主人公よりも主人公っぽい人である。“死刑を控えた無実の少年の恩赦を獲得するため”大陸横断レースに参加します。
(「スティール・ボール・ラン」第11巻 著者:荒木飛呂彦 発行:集英社)



*************


娘のあおいを産んだ後、「もし何かが少しでも違っていたら、娘に障害はなく、元気に走り回っていたのかもしれない。」と思うことが度々ありました。

「妊娠のタイミングがほんの少しでもずれていたら。」「違う産院を選んでいたら。」「妊娠中の行動ひとつが何か違っていたら。」

ふとした瞬間、そんな考えに取り囲まれてしまうときが、今でもあります。


娘の障害についてこれまで、様々な人が、様々な言葉を投げかけてくださいました。

「あおいちゃんが、このパパとママなら大丈夫って選んで生まれてきたんだよ。」
「きっとなにか前世からの因果が巡り巡ってこうなっているのよ。ママのせいじゃない。」
「これは試練みたいなものよ。」


私たち親子を思って、あたたかくお言葉をかけてくださったことにとても感謝しているのですが、正直、私の心を素通りしてしまう言葉も沢山ありました。


辛いとき、苦しいとき…。映画や漫画の架空の世界に、逃避して、なにか答えをみつけようとする、小中学生のころから少しも精神年齢が変わっていない、幼い私が、「娘が重度の障害を持っていること」「障害をもった子供の母親である今の自分の人生」…を、“納得”させてくれるパワーをもった言葉…。

自分の人生に照らし合わすには、荘厳すぎる、趣のありすぎる言葉ですが、「ネットにはじかれたボールはどちら側に落下するのか、わからない」という台詞、心にすごく響きます。


“何かが違っていたら、ボールは違う場所に落ちたかもしれないし、それでも同じ場所に落ちたのかもしれない。でもそれは人には推し量れない領域。けれど、ただ一つ言えるのは、ボールが落ちたのは今の場所だということ。”


**************


この第7部、全体をとおして、「多元宇宙論」とよばれるものを、テーマの下敷きにしているような印象を受ける作品になっています。

私には、理系の知識が全くありませんが、「多元宇宙論」とは、文字通り、「私たちのいる世界とよく似た平行世界、よく似ているけれど少しずつが違った世界が無限に存在しているのだ」という、いわゆるパラレルワールドの考え方のようです。(現実に、物理学でこういった研究もされているらしいです。)


「もしかしたら我が子に障害がなかったかもしれない世界」
「もしかしたら我が子が生まれていなかったかもしれない世界」
「もしかしたら自分さえ生まれていなかったかもしれない世界」


考え出すとキリがありません。

なにかが少しずつ違った世界、私たちが認識できない世界が、点のように、やがてそれが線を、円を描くように存在している…。


私は、なんの信心もなく、確固たる死生観も持っていない、ゆるーい人間なんですが、こういう考え方に、時折ロマンを感じて、日常悩んでいることがすごくちっぽけなものだと思わせてくれるときがあります。



漫画「ジョジョ」の第3部以降のパートは、“スタンド”とよばれる超能力を駆使したバトルになっていて、この7部においても、自分の過去・現在に未練タラタラの主人公ジョニィが、やがて、とんでもなくエゲツナイ能力をもったラスボスと対決することになります。


ここにも「多元宇宙論」の要素が絡んできて、なんというか、単なるバトルものを超越したものすごい戦いになっているなあ、と、ドキドキハラハラしながら読んでいました。


20代の頃は4部が一番好きだったけど、今は7部が好きかも。
時間があったら、また一気に読み返したいなあ。


sbrセット集英社
↑「スティール・ボール・ラン」全24巻完結 著者:荒木飛呂彦 発行:集英社

いともたやすく行われるえげつない実写化…!そんなお金があったら、早く5部をアニメ化してくれないでしょうか。7部は馬の動きがアニメーションにしにくいから実現不可能といわれてるらしいけど、なんとかなりませんかねえ。



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思いっきり趣味につき走ったことを書いてしまいましたが、この「映画・漫画・アニメ・小説」のカテゴリにて、障害のある子供の子育てをする中で自分の心を支えてくれた作品とか、障害者の登場するフィクション作品についての自分の感想……などを書いていきたいなあ、なんて思っています。


ブログにアクセスしてくださっている方がいること、読んでくださっている方がいること、コメントをくださったことがいること、すごく、すごく、嬉しいです…!

SNSも一切しておらず、コミュニケーション下手な私の文章、すごく癖がありそうですが、読んでくださった方、本当にありがとうございます。


ブログ開始前から書き溜めていた下書きがなくなってきた上、今月から娘の通園など生活の変化があって、慌ただしくなりそうなので、これからはゆっくり気ままに更新していきたいと思います。




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原因不明の脳性麻痺の娘・あおいについて綴るブログです。喉頭気管分離オペ・胃ろうオペを受けています。

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